ある部屋の風景蝉が鳴き始めた七月のある朝、昔付き合っていた人の部屋に似ていると思った。 塗りムラをわざとらしく残した安っぽい胡粉色の壁をなぞる。 ストライプのシーツ。 茶色の大きな枕。 灰色のタオルケット。 紺色の遮光カーテンの隙間から覗くのは微かだけれど確かに眩しいひかり。...
ばらとあのこ「薔薇の絵を描いて欲しい」と言ったあのこは、 いつも謎めいた空気感のある後輩だ。 ふわふわしていて、きびしい。 よわくて、つよくて、凛としている。 また一段と美しくなったあのこを思い出しながら、 薔薇と、あのこと、あのこへの愛をかたちにした。