青リンゴは丸かじりにされてしまった。
きれいな黄色はほとんどが白になり、時間が経つにつれて赤みを帯びていった。
青リンゴはスーパーの特売品であった。
赤い、少し傷のついたリンゴと一緒に150円で売られていた。
青リンゴはジャムにされることも、ケーキにされることも、
分け合われることもなく丸かじりにされてしまった。
もしかしたら青リンゴはたくさんの動物に食べられたかったかもしれないし、
誰かひとりの栄養になればいいと思っていたかもしれないし、
食べられるくらいなら腐ってしまった方がいいと泣いていたかもしれない。
或いは何も考えてはいなかっただろう。
青リンゴを食べた人間は、
「ああ、このリンゴをジャムにしてタルトに使ったら、
あの人にも食べてもらうことができたのに。」
と気付いて食べるのをやめた。
そして、筆とキャンバスを用意したのである。
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